Ⅰ 社会福祉法人福岡県厚生事業団事務局
1 概要
平成27年度は、福岡県障害者リハビリテーションセンター(以下「センター」という。)の5年間の指定管理事業者としての最終年度の年にあたり、公募という厳しい条件のなか、引き続き平成28年度から平成32年度までの5年間の指定を受けることができた。
課題であった常勤医師の配置に向け関係機関と調整を重ねた結果、平成28年4月よりリハビリ科医師をセンター長として配置し、医学的管理に基づく利用者へのサービスの向上、高次脳機能障害・発達障害者を対象とした外来診療などの支援強化を図ることができることとなった。
医療・福祉・保健などの関係機関と継続的に連携をとりながら、利用率の向上、利用者の社会復帰に向けたサービスの向上にむけ、取り組みを講じてきたところである。
2 理事会及び評議員会
定款第10条及び第14条の規定に基づき、次のとおり理事会及び評議員会を開催した。
・理事会
| 開催年月日 ・ 場所 | 付 議 事 項 | 結 果 |
第1回 | 平成27年 4月 1日 書面決議 | 1 評議員の選任 | 原案承認 |
第2回 | 平成27年 4月22日 書面決議 | 1 評議員の選任 | 原案承認 |
第3回 | 平成27年5月28日 博多サンヒルズホテル | 1 平成26年度事業報告 2 平成26年度決算報告 3 虐待防止対応規程の制定について | 原案承認 |
第4回 | 平成27年12月25日 書面決議 | 1 評議員の選任 | 原案承認 |
第5回 | 平成28年 2月19日 書面決議 | 1 補正予算について | 原案承認 |
第6回 | 平成28年 3月24日 博多サンヒルズホテル | 1 平成28年度事業計画 2 平成28年度当初予算 3 福岡県障害者リハビリテーション センター長任命について 4 福岡県厚生事業団規程の一部改正 について | 原案承認 |
・評議員会
| 開催年月日 ・ 場所 | 付 議 事 項 | 結 果 |
第1回 | 平成27年5月28日 博多サンヒルズホテル | 1 平成26年度事業報告 2 平成26年度決算報告 3 虐待防止対応規程の制定について | 原案承認 |
第2回 | 平成27年 7月17日 書面決議 | 1 理事(理事長)の選任 | 原案承認 |
第3回 | 平成28年 2月19日 書面決議 | 1 補正予算について | 原案承認 |
第4回 | 平成28年3月24日 博多サンヒルズホテル | 1 平成28年度事業計画 2 平成28年度当初予算 | 原案承認 |
※ 急を要する事項及び臨時的かつ軽易な事項については、定款施行細則第3条及び第10条の規定により
書面決議による理事会及び評議員会を開催。
3 施設運営
障害者総合支援法の基本理念である地域社会における共生の実現に向け、利用者のニーズに応えられる施設づくりに努めた。
また、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、障害者の権利利益の擁護を目的として、福岡県厚生事業団虐待防止対応規程を制定し、職員研修を通して利用者に対する虐待防止を図った。
訓練内容の充実を図り、利用者の障害の状態、生活にそった内容の充実とサービス水準の向上及び経営安定化に向けて、これまで以上に職員の結束と意識改革に努めた。
4 職員確保と非正規職員の処遇改善
正規職員の退職後は非正規職員の補充で対応してきたが、将来の事業展開を見据えて、適切な職員配置や経営上の課題について県と継続して協議してきたところである。
非正規職員の人材確保を図るため、支援員及び介護職員に支給されている処遇改善加算相当額を医療従事者処遇改善手当として、平成28年度より理学療法士及び看護師に対して支給することとした。併せて非正規職員のうち社会福祉士または介護福祉士の国家資格取得者に対して継続して資格手当等の支給を行った。
5 人材育成
適切な施設運営を推進していくためには、全職員の共通認識の醸成と資質の向上が必要であるため、正規、非正規職員に対し福岡県職員研修所が実施する基本研修や専門研修に継続して参加させ、全国社会福祉事業団が主催する研修や会議、リハビリテーション研究大会等へも派遣し情報収集と自己研鑽に努めるとともに、所内研修の充実も図り研修成果を活かせる環境整備を行い人材育成に努めた。
Ⅱ 福岡県障害者リハビリテーションセンター
1 方針
平成27年度は県の指定管理事業者として5年目の最終年度となり、次期指定に繋げるために利用者サービスの質の向上と効率的な運営を最重点課題に、県立施設としての使命感と責任感をもった施設経営に取り組んだ。また、障害者総合支援法の基本理念を踏まえ、障害者の方々のニーズや状況に応じた身体機能の回復に取り組むとともに、自立した日常生活または社会生活の実現に向け、円滑な地域生活移行並びに積極的な就労支援に取り組んだ。
「高次脳機能障害支援事業」では、福岡県高次脳機能障害支援事業に積極的に参画し、医療や福祉関係従事者などへの研修事業の開催や高次脳機能障害者の相談支援の普及に努めた。
2 利用者の状況
(1)利用の状況
医療機関や市区町村等との連携を通じて利用率の向上に努め、利用者のニーズに応じた計画的かつ効率的な訓練を提供し、退所後の地域生活移行に向けた関係機関との連携や社会資源情報の活用により、入退所の回転率が高い施設の特徴の維持に努めた。
機能訓練は計画を下回ったが、通所(日中のみ利用)で送迎を希望される利用者に対し一定地域への送迎サービスを継続して実施し利用の拡大に努めた。
生活訓練は、高次脳機能障害支援体制の充実とともに同障害者のニーズが高く推移している。
①自立訓練        月平均 79.8名 (計画92名) [定員106名]
・機能訓練       月平均 60.7名 (計画75名) [定員 88名]
・生活訓練       月平均 19.1名 (計画17名) [定員 18名]
②施設入所支援   月平均   72.8名    (計画81名) [定員100名]
(2)退所の状況
利用者のニーズや障害の状況を踏まえ、定期的な個別支援計画会議を開催し、相談支援事業所を始め関係機関とも連携し円滑な退所支援を行った。
平成27年度は退所者50名のうち30名が地域生活移行し、主な退所先として家庭復帰15名、グループホーム8名、一般就労2名、復職2名、就労系福祉サービス事業所に4名の他、職業能力開発校に3名入校することができた。
3 サービスの提供等
県のリハビリ専門施設として、その使命及び責任を果たしサービス向上に繋げていくためには、各専門分野の職員が連携し全職員による共通認識のもとで、次に掲げる事項に取り組むとともに、職員の資質の向上に努めた。
(1)利用者の個別性を尊重した個別支援プログラム(リハビリテーション実施計画書)を作成し、定期的な個別支援計画
会議の中で訓練経過を踏まえながら到達目標を検討または見直し、利用者のニーズに応じた支援を提供した。
(2)身体機能の改善を主目的とした「基礎訓練」並びに日常生活や社会生活の自立に向けた「応用訓練」を効果的に提供し、
利用者のニーズや障害の特性に応じた訓練に取り組んだ。
(3)高次脳機能障害に知見の深い非常勤医師を継続して配置し、その指導及び助言を受けながら同障害者を積極的に受け
入れ、各利用者の状態に合わせた訓練の提供に努めた。また、特に精神疾患を呈する同障害者に対し、精神科の
医療機関とも連携を図り的確な医学的診断を踏まえた訓練プログラムを提供した。
(4)退所後の円滑な地域移行を推進するため、住宅改修のための家庭訪問や他施設の見学のほか、復職先の事業所との
情報共有や試験出社の機会を提供した。
(5)「外出地域社会参加プログラム」では、利用者の自発的な社会参加と退所後の円滑な地域生活移行を促すため、
各種福祉サービスの社会資源を見学する「居宅支援コース」並びに就労意欲を促すため就労系事業所を見学する
「就労支援コース」を継続して実施した。
(6)休日(土曜日または祭日)、夏季(盆期間)及び年末にも訓練日を設けた「休日訓練」は継続して実施した。
(7)提供するサービスについて利用者に評価を求める「利用者満足度調査」を継続して実施するとともに、利用者のご意見や
ご要望を承る「意見箱」の調査結果を踏まえ、適切で質の高いサービスの提供に努めた。
4 高次脳機能障害対策
高次脳機能障害対策として次の取り組みを実施した。
(1)当センターは医療機関と実社会を結ぶ中間施設として、高次脳機能障害者の生活訓練を実施しているが、
県内唯一の入所施設として入所要件を満たす高次脳機能障害者を積極的に受け入れ、社会復帰の支援に寄与した。
(2)高次脳機能障害支援体制は、当センターのほか産業医科大学病院、久留米大学病院及び福岡市心身障がい
福祉センターの4機関が福岡県の支援拠点機関として支援ネットワークを構成しており、連携体制の強化並びに
関係機関との支援ネットワークを通じ、高次脳機能障害の正しい理解を促進するための普及・啓発活動に努めた。
(3)当センターが実施する研修事業では、医療、福祉及び行政機関のほか、教育関係者や介護保険サービス事業所並びに
ご家族の方々など幅広く参加を求め、より実践的な研修内容に努めた。
(4)高次脳機能障害に広く関わりのある著明な講師を招き、当事者、家族及び一般の方など幅広い参加を求めた講演会を
開催した。
(5)相談支援コーディネーターによる家族支援相談会の実施、専門相談ホットラインによる相談等を引き続き実施し、
併せて県との共同主催で出張家族支援相談会も実施した。
5 リスク管理の徹底
利用者が安心した入所生活または訓練が出来るよう、職員全員が常に利用者の心身の状況を的確に把握するとともに転倒事故防止対策に努めた。また、利用者の健康管理はもとより、平常時から食中毒やインフルエンザ等の感染症の予防に万全を期するため、職員に一層の注意喚起を行った。さらに火災や地震のリスクは常に潜在していることを踏まえ、消防計画に基づく避難・消火訓練等を通して職員の危機管理意識を高めた。
6 地域福祉への貢献
当センターが県の施設として地域福祉に貢献を果たしていくことは重要な使命の一つであるため、次の事項に取り組み地域との積極的な交流を図った。
(1)地域の医療機関、福祉または介護保険事業所との各種連絡会議への参画。
(2)障害支援区分に係る市町村審査会及び介護認定審査会への職員の派遣。
(3)大学、専門学校等の学生の実習、研修の受け入れ。
(4)職員が有するノウハウを活かすため、研修会や講習会等へ職員を講師として派遣。
(5)地域の障害福祉啓発のための小学校との交流事業、中学生の職場体験の受け入れ。
(6)地域の福祉活動や行事に参画して、生活訓練の模擬体験を提供。